気付けば、君の腕の中。


勇気を振り絞って、メモ用紙くらいの小さな紙を、凜くんの机に向かって投げた。


…凜くんは、まだ来ていない。

きっと教室に入ってきたら、真っ先にこの手紙を見つけるだろう。


それを読んで…、どう思うかは凜くん次第だ。


あたしは机に突っ伏すと、ため息を呑みこむ。

お父さんからメールの返事は来ないし、お母さんは―…。



あの日、お母さんに運動会の話をしたら「仕事が休みだったら行く」とのことだった。


…相変わらず、仕事を頑張っているお母さんに胸が痛んで、あたしは思わず抱きしめてしまった。


久しぶりに触れたお母さんの体は、とても痩せ細っていた。


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