気付けば、君の腕の中。


お母さん…、来てくれるかな。

ううん…、来てくれなかったとしても、言わないよりもずっといいはずだ。


きゅっと唇を噛み締めると、カタン、と前の席に誰かが座った。

―…誰か、なんて一人しかいない。


ばくばくと胸が早鐘を打った。

だ、大丈夫…大丈夫!


ぎゅっと目を瞑ると、ぽすんとあたしの頭に手のひらが乗っかった。

ぎこちなく動くそれは、陰輔くんの手のひらではない。



あたしの右手に触れた凜くんは、何かを握らせて、また優しく撫でた。


…え、えっ? 顔、上げてもいいのかな。


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