気付けば、君の腕の中。
あたしは巻いていたマフラーを桃に巻きつけると、照れ臭そうにお礼を言われた。
桃は小さいときから一緒にいた妹のような存在だから、今更遠慮されたりしない。
「折角なんだし二人で帰ってみたらどうかな」
「…分かった。じゃあ、一ノ瀬、行こっか」
「うん…! えへへ、ありがとう。絢華、また明日ね」
「ん、また明日」
二人の姿が見えなくなるまで手を振ると、後ろからため息が聞こえた。
「てめー、バカなのかよ?」
「あれ、月城いつからいたの?」
群青色のマフラーを巻いた月城が壁に寄りかかって、呆れ顔であたしを見つめていた。
「お前…アイツのこと惚れてんだろ?
“また”そうやって背中押すんか?」
靴箱から自分の靴を取り出すと、あたしは近づいてくる月城に苦笑した。