気付けば、君の腕の中。


きっと、過去の話を聞いても胸が痛くならないのは、月城のおかげなんだろう。


「あの時はありがとう。

月城があたしの話を聞いてくれなかったら、一人で抱えて泣いてばかりだったから」

「…バーカ。話くらい聞いてやるっての。

それより、その寒そうな首元を見せ付けて…その辺の男を誘ってんのか?」

「はあ?」


バカじゃないの、と言いたげな視線で睨むと、月城は自分のマフラーをあたしに巻きつけた。


「…帰んぞ。どーせ途中まで一緒だろ」

「月城のお家って反対方向だよね?」

「いーんだよ、今日はてめえの駅まで行きたい気分なんだよ。察しろ」

「…あの無人駅、何かあったかなあ」


だけど…分かってるよ、月城。

遠回しな言い方だけどちゃんと伝わっているから。


十分すぎるほどの優しさに、あたしは零れた笑みをマフラーで隠した。


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