気付けば、君の腕の中。


奈々美にバトンを手渡した陰輔くんは、あたしが用意したタオルを奪って、パイプ椅子に腰を下ろした。


「はー…、久しぶりに全力疾走した気がするわ……」

「お疲れ、どうだった?」

「…幼稚園のガキには楽しいかも知れねーけどおれにはキツい」


初めに配っておいたスポーツ飲料を飲んだ陰輔くんは、かなり本気だったようだ。


「絢華、俺にもタオルくれる?」

「凜くんもお疲れ様。はい、タオル」

「ん、ありがとう」


ふらふらした足取りであたしのタオルを受け取ると、陰輔くんとは反対側に座った凜くん。


…結構疲れているみたい。
そんなに楽しんでくれたのかと思うと、運動会を開催してよかったと思えた。


< 398 / 445 >

この作品をシェア

pagetop