気付けば、君の腕の中。
奈々美にバトンを手渡した陰輔くんは、あたしが用意したタオルを奪って、パイプ椅子に腰を下ろした。
「はー…、久しぶりに全力疾走した気がするわ……」
「お疲れ、どうだった?」
「…幼稚園のガキには楽しいかも知れねーけどおれにはキツい」
初めに配っておいたスポーツ飲料を飲んだ陰輔くんは、かなり本気だったようだ。
「絢華、俺にもタオルくれる?」
「凜くんもお疲れ様。はい、タオル」
「ん、ありがとう」
ふらふらした足取りであたしのタオルを受け取ると、陰輔くんとは反対側に座った凜くん。
…結構疲れているみたい。
そんなに楽しんでくれたのかと思うと、運動会を開催してよかったと思えた。