気付けば、君の腕の中。
月城と駅で別れた後、あたしは真っ直ぐ家に向けて足を速めた。
「…あら、あの子って白鈴さんのお家の…」
「この前離婚したんだってねえ?」
「昔からあの夫婦は仲良しだって、近所でも羨ましがる人が多かったのに」
ひそひそと聞こえる近所の人の声。
突き刺さる、哀れむ視線。
お父さんとお母さんはあたしにとって、何よりも大事な存在だ。
勿論、お姉ちゃんも。
どこか行くときには必ず温かい手で、あたしの手を包んでくれた。
お祝い事の時にはお父さんが美味しいケーキを買ってくれて、お母さんがご馳走を用意して。
他の家庭と変わらない、幸せな家族だ。
…それに、まだお父さんとお母さんは離婚していない。
きっとチャンスがあるはずなのだ。
もう昔のように戻れないと分かっていても、お姉ちゃんに忠告されても、あたしには「諦める」なんて選択肢はない。