気付けば、君の腕の中。
泣きそうな表情で「バーカ」と言った陰輔くんは、あたしの手紙を受け取ってくれた。
次に手紙を渡すのは、清水さんと美湯さんだ。
「清水さんは…、あたしのことを何でも見抜いてしまうんだなって思ったんです。
人のことを誰よりも見ている人だからこそ、あたしに優しくしてくれて…本当に嬉しかったんです」
「…絢華さん」
「清水さんに料理を教わったり、他愛のない話をするたびに、…あたしは家族とこんなふうに話したいと夢を持ちました」
…“笑顔が上手ではない”と言われてから、あたしが心から笑えていないことに気づけた。
「清水さん…、どうか美湯さんとこれからゆっくり向き合って、沢山お話をしてください。もう、美湯さんなら大丈夫ですから」
あたしの言葉に美湯さんは頷いて、清水さんの手を握り締めた。