気付けば、君の腕の中。
「っ…、強く、なったのね…本当に…」
ぽん、と大きな手のひらがあたしの頭の上に乗せられた。
小さな頃、何度も撫でてくれたお父さんの手のひらだ。
「ああ…、お前のおかげで母さんと話せることが出来たよ」
二人はあたしの大好きな笑顔を浮かべた。
その言葉が嬉しくて涙を堪えると、お父さんまで顔を歪めて、泣きそうになっていた。
「…些細なことで母さんと揉めてしまって、絢華や涼華を巻き込んでしまった。
だから…、これからちゃんと向き合うつもりだ」
「おと、うさんっ…それじゃあ……」
「離婚はしない。これからお父さんも、あの場所へ帰るよ」
ずっと聞きたかった言葉に、あたしはぼろりと涙を零して、人前だと知っていながらもわんわんと声を上げて泣いた。