気付けば、君の腕の中。
ちゃんと見たら、絢華が俺のことをどう思っているのかなんて分かるはずだ。
それなのに“恋愛”から逃げ続けた俺は、絢華の些細な気持ちの変化ですら気づいてあげられなかった。
「…キスは、しなかった。俺がすんでのところで止めたから…」
目を丸くさせた絢華は「何で」と言わんばかりに俺を見つめた。
そんな顔をしなくても、俺は別に一ノ瀬が嫌いだったわけではない。
「一ノ瀬のことは……、“友達”としてなら、普通に優しいし俺の心配をしてくれるから、好きだよ」
―だけど、気づいてしまった。
「…一ノ瀬は結局“友達”止まりの感情だった。俺が本当に欲しかったのは、絢華なんだ」