気付けば、君の腕の中。


それに気づかせてくれたのは、俺を支えてくれていた一ノ瀬だった。


「…その噂が広まる前、久しぶりに一緒に昼ご飯を食べようって言われて、一ノ瀬と一緒に裏庭で食べたんだ」


あの日、全てを吹っ切ったような表情で、俺を呼んだ一ノ瀬は、多分泣くのを堪えていたのだろう。


「一ノ瀬はご飯を食べ終えると、俺から視線を逸らさずに聞いたんだ」



“本当はもう、気づいているんでしょ?”



「そう言われて…、俺の心の中に絢華がいることを意識した。…一ノ瀬は付き合ったときから、俺が絢華を見ていることに気づいていたんだ」


今までの彼女は「独り」にならないために、形だけの付き合いだった。


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