気付けば、君の腕の中。
彼女は世の中で言う「平凡」な女の子だった。
とりあえず貰った菓子折りを母に渡せば、珍しく上機嫌になった。
どうやら母も独りが怖いようで、自分と年が近い女性がいるのなら安心だと思ったようだ。
俺はベッドに沈み込むと、腕を瞼の上にのせてため息をついた。
「…何で、あんなこと言ったんだろう」
―「…君の家族は、仲いいの?」
「そんなこと聞かれたら…、誰だって気持ち悪い、よね」
でも、あの時確かに彼女の表情は憂いに満ちていた。
菓子折りを持ってきたときだって、普通ならば母親が来るだろうに。
母親が忙しくて彼女が代わりに来た可能性もあった。
それでも―、確かに俺は彼女が「幸せそう」には見えなかったのだ。