気付けば、君の腕の中。
「……どういう意味、なんだろう」
気になるけど、あの表情は踏み込んで欲しくないと物語っていた。
仕方なく踵を返すと、目の前をちらりと白い粉が舞った。
「わあ……粉雪だ…」
季節は冬を迎え、12月も呆気なく終わろうとしていた。
もう少しで、あたしも高校一年生、つまりは最後の中学校生活が終わるのだ。
そういえば彼はどこの中学校に転校するのだろう。
県外に引っ越さない限り、双坂中学校から徒歩10分の距離にある双坂高校に進学するはずだ。
双坂高校には、双坂中学校以外にも、妃坂南中学校の人も進学するだろうし、そうとなれば彼と同じ中学校でなくても、高校生になれば会える確率が高い。
もし、彼があたしの通う双坂中学校に来るなら…。
少しでも話せるきっかけがあるといいな、なんてこの時は思った。