気付けば、君の腕の中。


それから俺は彼女を避け続けた。

駅のホームで見かけたら、すぐさまマフラーで顔を隠したり、わざわざ前の中学校の名前も思い出せない子と付き合って、俺が他校の人に見えるように仕向けたりした。



彼女の目を見ていると、何故だか無性に泣きたくなってしまうのだ。


俺の目の前で名前も分からない恋人が、楽しそうに何かを語っているけど、俺は愛想笑いを浮かべるだけ。


…でも、今俺は独りじゃないから。


だから、全然寂しくはないんだ。



新しく通う中学校の最寄り駅で降りると、あの女の子の姿はどこにもなかった。


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