気付けば、君の腕の中。


彼女の存在は消えないまま、数日が経過したある日の晩。


母さんが仕事で遅くなるため、鍵を持っていない俺は家の前で待っていた。

そんな俺に話しかけたのは―、避けに避け続けたあの女の子。



思わず身構えてしまうと、彼女はまるで猛獣にでも話しかけるように、恐る恐る「こんばんは」と言ってきた。


元々、話しかけられるとは思っていなかったため、俺は反応が遅れてしまった。


目の前であたふたする彼女を見て、俺はつい口角が緩んでいた。



…何で俺、彼女を避けていたんだろう?

今までと違うタイプの子で、普通に面白くて優しいし、愛想のいい人なのに。


< 51 / 445 >

この作品をシェア

pagetop