気付けば、君の腕の中。
▼ Story 2
+ 優しく呼び止めた声
(Side:絢華)
いつも通り身支度を整えて、久しぶりに軽くなった鞄を肩にかけた。
今日は終業式だ。
二週間だけの冬休みに心が弾む。
ふわふわした足取りで家を出ると、家前に立っていた人物に目を見開かせた。
「…月城、おはよう。どうしたの?」
太陽の光を浴びてきらきらと輝く、月城の赤茶色の髪の毛。
あちこちにツンツンとはねているのは、彼がそれをオシャレだと思っているからだ。
気だるそうにポケットに手を突っ込んで、こんな寒い外で何をしているのだろう。
月城のお母さんとあたしのお母さんは偶然にも同じ職場で働いている。
だからあたしの家庭事情も恐らく知っているだろうし、何度かあたしの家で勉強会を開いたものだから、家を知っているのも当たり前だ。