気付けば、君の腕の中。
その言葉を聞いて、つい苦笑してしまう。
本当、あたしの気持ちなんて何も知らないくせにね。
それでもあたしは彼の腕を振り払わずに、お姉ちゃんを待ってあげるのだ。
お姉ちゃんは今バイトを始めたようで、夜帰って来ないことが多いけど、今朝はまだ寝ていたはず。もうそろそろ出てくるだろう。
あれでも高校三年生なんだから、しっかりして欲しいよ、全く。
隣でそわそわしている月城を見て、まだ傷つく自分がいた。
「…あれ、絢華に、あー…来也じゃん。
なあに、私のこと“また”待ってたの?」
「……別に違うっすよ。じゃあな、絢華。今日は遅刻する」
「ええ、私一人でも高校に行けるのに」
「アンタ、方向音痴っすよね。…はあ、ほら行きますよ」
優しくお姉ちゃんの腕を掴んで、あたしに背中を向ける月城。
もう、あたしの恋なんて「終わったんだよ」って何度も自分に言い聞かせていたのに…どうして泣きそうになるのだろう。