気付けば、君の腕の中。
奈々美と顔を見合わせて、首を傾げる。
あたしに呼び出しなんて珍しい。
今日は委員会もないし、あ…、部長さんだったりして。
鍵を返すの、一日遅れてしまったから…。
少し青ざめながら扉に近づけば、そこからひょこっと凜くんが顔を出した。
「あれ、凜くん?」
「おはよう。ちょっといいかな?」
「? うん、まだHRまで時間があるからいいけど…」
それを聞いた凜くんはホッとしたように胸を撫で下ろした。
とりあえず此処では何だからと言って、凜くんに連れられた場所はあまり人が通らない南廊下だった。
「え、と…お願いごとがあって…」
気まずそうに視線をあちこちに動かす凜くんを見て、何かあったのかと不安になった。
「実は―…」
だけど、あたしの不安を思い切り吹き飛ばした凜くんの言葉に目を見開かせる。
「一ノ瀬とのデートに、一緒に来て、欲しいんだけど……」