気付けば、君の腕の中。
家に着いて、玄関で靴を脱ぐと、お姉ちゃんとすれ違う。
「あれ、お姉ちゃん。どこか行くの?」
あたしの姉である、涼華(りょうか)お姉ちゃんは三つ年上だ。
大人びたお姉ちゃんに似合う、黒いトレンチコート。あたしには到底履けなさそうなヒールの高い靴。
いつの間にか、あたしの知らないことばかり興味を持つようになったお姉ちゃんは、今からデートだろうか。
…先週彼氏と別れたと聞いていたけど、新しい恋人でも出来たのかな。
「…ああ、今お母さん機嫌悪いから。
近寄らないほうがいいと思うよ」
その言葉にずきりと胸が悲鳴を上げた。