気付けば、君の腕の中。
思わず目が点になってしまった。
恥ずかしそうに笑って「ダメかな」と訊ねる凜くんは、まるで恋愛初心者のように見えてしまう。
「え、え……。
あのはっきり言うけど、凜くんって今まで彼女さんとかいた、よね…?」
「うん…。でも俺といてもつまんないって言われて…、大体デートしたら振られるんだ」
彼の笑みが引きつっていた。
何とも言えない凜くんの恋事情に、あたしは開いた口が塞がらない。
「じゃ、じゃあ…桃とはちゃんと付き合いたいって、そう思ったから…頼ってくれたの?」
「それもあるんだけど、絢華なら頼っても俺を受け入れてくれそうだから」
寒さで鼻が赤い凜くんは、頬まで赤く染まっていた。
それが照れているのか恥ずかしいのか、あたしには分からなかったけど、頼ってもらえるのは凄く嬉しい。
「…うん、あたしでよければ全然付き合うよ!」
あたしの了承を得た凜くんは、それはそれは嬉しそうに笑って、あたしの手をぎゅっと握り締めた。