気付けば、君の腕の中。
半分は嘘で、半分は本当だった。
元々冬樹くんのお兄さん―、あたしの二つ上の先輩のことは好きとか分からないまま付き合ってしまった。
どうして彼があたしに告白をしたのか、多分チャラい先輩のことだから「遊び半分」だったのだろう。
それでも彼はとても優しく、演技とは思えない愛情をくれた。
家族の絆にヒビが入った瞬間、それから遠ざけるために手を繋いでくれたのは先輩だったのだから、少しだけ惚れていたのかも知れない。
でも、あたしはまだ中学一年生だったから、幼すぎたのだ。
恋だとか、愛だとか。
そんな言葉を聞くのは漫画やドラマだけで、実際に囁かれてもぴんと来なかったのが本音だ。
「冬樹くん…、お兄さんにお元気でって伝えておいてね」