気付けば、君の腕の中。
縋るような思いで、お姉ちゃんに視線を向ける。
「もう…、あたし達戻れないのかな?
昔みたいにさ、色んなところに出かけたり、遊んだり……」
「そういうの、お母さんには禁句だよ。
…全部終わったこと。今更後悔したって戻れるわけじゃないんだよ。いい加減、絢華も前向きなよ」
「…お姉ちゃん」
お姉ちゃんはそれでいいの、そう聞こうと思ったけど、言葉は出てこなかった。
「…行ってらっしゃい、お姉ちゃん」
「うん…、今日は帰らないからお母さんを頼んだよ」
音を立てないように家を出て行ったお姉ちゃんを見送ると、弱虫なあたしはぽろりと涙が零れ落ちた。