気付けば、君の腕の中。
左手に持っていた携帯を聞き手に持ち替えて「う、うん。全然大丈夫、です」と答えると、力の抜けるような笑い声が耳に響いた。
『何で敬語なの?』
「何ででしょう…」
『はは、そうだ。予定決まったよ。後、もう一人誘えたから』
「ほんと? よかったよかった。それで日付はどこ辺り?」
『えっとね、年が明けて三日後でどうかな?』
三日…、恐らく空いているだろう。
大丈夫だよと答えれば、電話越しに凜くんが喜んでいるのが分かった。
ふと、凜くんの声がかすれて聞こえた。
「…あれ? 今外にいるの?」
『うん、まだ母さんが帰ってきてなくて、鍵がないんだ』
さっきニュースでは気温が5度以下まで下がると言っていたはずだ。