気付けば、君の腕の中。
あたしは少し悩んだ後、携帯を少しだけ強く握り締めた。
「凜くん、ちょっと待ってて」
『? うん、分かった』
携帯に声が入らないように気をつけて、リビングで寛ぐ奈々美へ視線を向けた。
「……奈々美、あたし」
「行ってきたら?」
「!」
上手く言葉が見つからず、悩んでいたあたしを救ったのは奈々美だった。
背中を押すような言葉に目を見開かせる。
「だけど、一つ条件つきで」
「…条件?」
「必ず此処に帰ってきてね。まだ終電があるだろうし、時間はそれまでにすること!」
「え、え? それは勿論帰ってくるつもりだったけど…どうして?」
「…あのね、絢華。付き合ってもいない男女が長い間二人きり…なんて、変に慰めあうだけでしょ?」
「…うん」
「だから、絢華はその転校生に毛布なり、温かい飲み物を渡したらすぐに帰ってきて」
心配そうにあたしを見つめる奈々美に、涙が零れ落ちそうになった。
「…ありがとう、奈々美」
「いーえ」