気付けば、君の腕の中。


凜くんに毛布を持って行きたいと伝えれば、少しだけ悩んだ後『いいの?』と寒そうな声が返ってきた。


これはあたしのわがままだ。

折角奈々美の家にお邪魔しているのに、途中で抜け出すなんて酷い話だと分かっている。


凜くんだって、桃に連絡を入れたら、桃が何かしら助けてくれるかも知れない。


…それでもあたしは凜くんをほっとけないのだ。


急いで改札口を通って、電車を10分ほど待つ。


じわじわと寒さが身に染みると、よりいっそうあの時電話を切らなくてよかったと、安堵のため息を零した。



ようやく家に着くと、急いで温かい毛布を持って、途中の自動販売機で買ったココアを片手に凜くんの家に向かう。


立派なお家の玄関前に、ぼんやりと空を見上げる凜くんが、そこにいた。




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