気付けば、君の腕の中。


やっぱりあたしにはこういう時にどうすればいいのか分からない。

目の前で今にも泣き出しそうな人を見て、そっと視線を逸らすことなんて出来なかった。


…奈々美にまた叱られちゃうかな。


「……あたしは知りたいよ、凜くんのこと」



すると、毛布の中から伸びてきた手のひらがあたしの腰を引き寄せた。


「絢華…、あんまり他の男にこうやって、喜ぶようなこと言わないで」

「…?」

「それと、この前一ノ瀬が下駄箱のところで待ってたときも、付き合う前だったけど、彼女優先とか俺にはないから」

「え……」


思いもよらない言葉に凜くんの胸板を押して距離を取ると、真っ直ぐとあたしを見つめる凜くんの視線と重なった。


「…俺は、彼女よりも、ずっと絢華みたいな人が傍にいてほしかったんだ」


どういうことか分からなくて、ただ困惑するあたしに、凜くんは儚く微笑んだ。


「だって…彼女はいつか離れるでしょ?

でも、友達なら…絢華みたいな距離感を保ってくれる人なら離れないから…」


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