気付けば、君の腕の中。
辺りが静寂に包まれていく。
それは仄暗く、どこか寂しい。
凜くんのずっと抱えてきた―、小さな苦しみだった。
「…絢華は、“絶対”彼女になりたいなんて…言わない、よね?」
言葉とは裏腹に凜くんの手のひらは、あたしの背中を優しく擦っていた。
「俺と、ずっと友達で…いてくれる?」
飴色の澄んだ瞳が、じっとあたしを捉えた。
あたしの持っていたココアの缶がゆっくりと落ちていくのも気にせず、今までで一番器用に笑うことが出来た。
「…勿論、あたしはずっとずっと凜くんの“友達”でいるよ」
その声が震えたのはきっと―、寒さだけではないだろう。
それでも気にしないフリをした。
凜くんは心底嬉しそうに破顔させて、あたしをもう一度抱きしめた。