気付けば、君の腕の中。
ゆっくりと凜くんの腕から解放されると、あたしは用事があるからと言って、足早にその場から立ち去った。
凜くんの視線から逃げるように角を曲がる。
その時、あたしの頬に温かい何かが伝っては落ちていった。
月城がお姉ちゃんの手を引っ張る姿を見るよりも、先輩に結局遊ばれただけだと分かったときよりも、何倍も胸が苦しい。
「…」
…違う。
勘違いするな、あたし…!
まだ月城に対して、未練があるのに…それなのに凜くんがす、…好きなんてありえない。
ぶんぶんと首を横へ振って、何度も息を吸っては吐いた。
ようやく落ち着きを取り戻すと、奈々美の家に向けて、全ての感情を振り切るように走った。