気付けば、君の腕の中。
あたしは目の前で涙を滲ませる彼女を見て、小さく息を吐いた。
…やっぱり奈々美は凄いや。
まるであたしのお姉ちゃんみたい。
「…バカかも知れないけど、あたし決めたよ」
「また…、先輩みたいに“背中を押す”パターン?」
「ううん、今度は違うよ」
きょとん、とした奈々美にあたしは笑うことが出来た。
「凜くんの笑顔が増えるように、あたし凜くんの“友達”になりたい」
「…絢華」
「先輩の時や月城の時は、背中を押すか見守ることしか出来なかった。
…でも凜くんは最後まで見届けたい。凜くんが幸せだって思えるまで、彼の友達でいたいの」
「…ここまでいけば、自己犠牲のプロかも知れないわね…」
ぽんぽんと優しくあたしの頭を撫でた奈々美は、空になったコップにお茶を注いだ。
「じゃあうちは転校生くんが幸せになっても絢華の傍にいよーっと。
これで絢華は一人で泣けないもんね」
「…奈々美、お姉ちゃんみたい」
「あはは、うちはお姉ちゃんかあ。じゃあ転校生くんは弟?」
「凜くんが弟…、いいかも知れない…」