気付けば、君の腕の中。



―年が明けて、三日後。


ついにやってきた、凜くんと桃のデート付き添い日。

お姉ちゃんに借りた服を着て、少しだけメイクをすれば完璧だ。


昨日の夜、突然お姉ちゃんに「デートみたいなものに行く服を借りたい」と頼んだところ、予想外にも嬉しそうに服を貸してくれた。


お姉ちゃん曰く「ようやく絢華も恋愛が出来たのね」とのことだ。


確かにお姉ちゃんには先輩と付き合っていたことを教えていないし、凜くんの存在も知らないから「恋愛していなさそう」と思われても当然だろう。



「待ち合わせ場所は…、あ。ここってお父さん達が好きだったレストランがある駅前だ」


久しぶりに学校とは反対方向に向かう電車に乗った。

昔はテーマパークがあったり、美味しいレストラン街があるから、よく来ていたのに…。



「絢華…、おはよう」


春風のような優しい声が耳に届いた。

振り返ると、少しぎこちない凜くんの姿が視界に映る。


桃とのデート、緊張しているのかな…?


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