気付けば、君の腕の中。


真っ黒なフードつきのコートを羽織り、銀色のチェーンネックレスを首から提げた無愛想な表情でこちらを見つめる彼は一体…。


困惑するあたしを置いて、凜くんは我に返ったかのように「あ、えっと」と口を開いた。



「か、彼が今日誘った、五十嵐 陰輔(いがらし いんすけ)って言って…。
俺の元同じ中学だった人、なんだ」

「……なに、おれはこのバカみてーな女といればいいわけ?」

「バカッ…!?」


彼が指差したのはあたしだった。

目を丸くさせたあたしを見て、凜くんは慌てて「バ、バカではない、と思う!」と否定してくれた。


…何となくだけど、感じ悪い人だなあ。

凜くん、本当にこの人と友達だったの?

友達…だから、今日呼んだはずだけど…。



「で…どこ行くわけ。無難にテーマパーク?」

「ええと…、そこでいいかな?」

「あたしはいいけど、桃はどう?」

「うん! 私も全然大丈夫だよ」


にこりと微笑む桃に、やっぱり可愛いなあとまるで自分の妹のように思ってしまう。


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