気付けば、君の腕の中。
さっさと歩き始めた五十嵐くんの後を追う、あたし達三人。
…こういう時ってあたしが前に行ったほうがいいのかな?
でも桃はあたしの腕に、自分の腕を絡めているし…。
凜くんは桃とは反対側のあたしの隣を歩くだけだ。
背中を押すべき…?
「…おい、バカ女。お前、前歩けよ。そんなことすら考えてやれねーのかよ…」
「べ、別に今そうしようとしてただけだから!」
ゆっくりと桃の腕から抜けると、五十嵐くんの隣を歩こうとした。
「! 凜、くん…?」
引き止めるかのように凜くんがあたしの手を握り締めた。
「あ、いや…ごめん」
もう一度だけ強く握り締めた後、凜くんはゆっくりと手を離した。
その時、一瞬だけ見せた凜くんの不安そうな表情が、どこか嫌な予感がした―。