気付けば、君の腕の中。


あまりにも低い声に、思わず彼のほうへ視線を向けた。


冷めた瞳で凜くんを見る五十嵐くんは…、本当に凜くんの友達、なの…?

前に凜くんが言っていた「家庭事情のせいで苛められてた」という言葉が引っかかる。


あたしの勝手なイメージだけど、凜くんは彼女が出来ても、あんまり友達がいないように見えた。


だから…、あんなにも“友達”に執着…しているように思えたんだけど…。



「とりあえずチケット買う?」


桃の声に我に返ると、皆チケット売り場に移動していた。

あの五十嵐くんも平然とした表情で、チケットを買っている最中だ。


今は…気にしないようにしなきゃ。

折角凜くんが笑ってくれたのだから、今日は目一杯楽しませないと…!


慌てて皆のところへ向かうと、桃は凜くんにチケットを買ってもらったようだ。

あたしも買おうかとカウンターに行こうと足を動かせた、その時。


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