気付けば、君の腕の中。
すっと目の前に差し出されたチケット。
驚いて顔を上げると、相変わらず無表情のまま五十嵐くんがチケットを押しつけてきた。
「え、え…いいの?」
「…そのためにおれを呼んだんだろ。さっさと行くぞ」
…どこか怖いイメージがあったけど、そうでもなかったのかな。
渡されたチケットを握り締めて、五十嵐くんの後を追った―。
テーマパーク内は結構混雑していた。
それもそのはずだ。
今日は年が明けたばかりで、会社員の人は殆ど休みなのだろう。
家族連れの人もいれば、恋人同士で来ている人もいた。
あたしは前を歩く五十嵐くんに視線を向けては、話すタイミングを見失う。
…一体、どこに向かっているのだろう。