気付けば、君の腕の中。
「ふーん、じゃあ時間が勿体無いし行ってくる」
「じゃあ絢華と坂木くん、近くにカフェがあると思うから、そこで待っててね」
ふわふわとした笑みを浮かべて立ち去る桃を見送ると、あたしは小さく息を吐いた。
「…桃、大丈夫かなあ。昔はお化け屋敷なんて苦手だったと思うんだけど…」
「ねえ…絢華、一つ言いたいことがあるんだけど…」
「ん?」
「…五十嵐には気をつけて」
カフェには行かずベンチに腰を下ろすと、凜くんが真面目な表情で呟いた。
…本当に友達、なんだろうか?
どんどん謎が深まる一方で、あたしは真実を知ってもいいのか躊躇した。
「そ、そうだ! 凜くん、折角なんだから待ってる間に何かして遊ぼうよ!」
「え?」
「えっと…あ、風船! ここの風船ね、猫の形があるんだよ。ほら、凜くんの家の庭にもいたよね?」