気付けば、君の腕の中。
+ 胸の苦しさと捨てた声
風船を貰った後、ジェラートという、今流行りのアイススイーツを食べた。
凜くんは元々アイスすら知らなかったようで、恐る恐る舐めてみて、パッと表情を輝かせる。
「…何これ甘い!」
「あはは、そりゃあアイスは甘いよ。
凜くんのはミルク味かあ、美味しい?」
「うん、すっごく美味しい。絢華のは…美味しい、の?」
「え? これ苺味だよ?」
「そうなの? てっきりトマトかと…」
「野菜味の種類もあるけど、フルーツ系も結構充実してて…。しかも苺味は冬季限定みたい」
納得したように頷いた凜くんに、馴れ馴れしいかなと思いながらも、一口いる?なんて聞いてしまった。
…あ、こういうのは恋人とやるものだっけ。
あたしは先輩と付き合ったとき、ただの形だけで、どこかに出かけたことや手を繋ぐことすらなかったから…。
すると、凜くんは躊躇なくあたしの手に持っていたカップと、自分のカップを交換した。
そのままスプーンで掬って、ぱくりと口の中へ運ぶ。