乙女ゲームヒロインは悪役令嬢をお望みです!


「はぁ……それで?」

「……案外あっさりしているわね」

「案外もなにも、俺はリアの言うことを信じていませんからね。リアの一番近くにいたと自負している俺がそのゲームとやらにいなかったのはおかしいですから。……夢でも見ていたんじゃないですか?」


呆れたように、いや、実際呆れているのだろう。

ルイは先程の甘さを引っ込め、蔑む目で私を見た。


反面、私も負けていない。

私の話を理解しないルイに蔑みの目を……あ、いや、負けました。


私はルイから視線を外すと、また紅茶へ手を伸ばす。

カタカタと震えているのは、ルイが怖いわけではない。

えぇ、違うわ。


「あ、あのね、私が夢じゃないって思ったのには理由があるのよ?」

「その理由とは、なんですか? くだらないことを言ったらはっ倒しますよ?」

「はっ、はっ倒す……!? い、いいえ、そんなことはさせないわ!」

「御託はいいので、はやく、簡潔に、話して、ください」


子供に言い聞かせるようにゆっくりと、一文字一文字区切って話すルイ。


苛立っているのだと気がつくと、サァーと血の気が引いた。
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