乙女ゲームヒロインは悪役令嬢をお望みです!
こんなこと、前はなかったのに──
自然とそんなことを考えてしまい愕然とする私は更に首を傾げた。
待って、“前”っていつの話?
深く考えようとしたその時、突然頭に鋭い痛みが走る。
「あああぁあぁっ!」
らしくもなく、大声を出してしまった。
貴族令嬢としてあるまじき行為。
けれども、そんなことを考える余裕なんてない。
頭を両手で押さえて、私は膝から崩れ落ちてしまう。
激しい痛みで立ってすらいられない。
学園長先生もさすがに話は止め、私を見る。
学園長先生だけじゃない。
多分ここにいる人全員が私に注目している。
学園長先生は何かを察したのかすぐさま周りに指示を出した。
「聖女様をはやく保健室へ連れていきなさい!」
「は、はいっ!」
聞き捨てならない言葉が出てきたが咎められない。
隣に立つルイに手を伸ばす。
「我慢していて」
囁かれて、いわゆるお姫様抱っこをされた。
触れたルイの暖かさに私はホッとする。
と、同時に私は意識を手放した。