乙女ゲームヒロインは悪役令嬢をお望みです!
私はそのことに気がついていたのだけれど、どうすることもできなかった。
ルイが抱えて悩んでいたのは私たちにはどうしようもない身分の差。
お互いの想いは通じていても、周りの声は抑えられない。
今だって側に居るだけでルイを非難する声が消えることはない。
たとえルイが側に居ることを私が望んでいたとしても。
私はルイの背中にソッと腕をまわす。
これから私が口にすることは、さらにこの人を悩ませると分かっていても『言わない』という選択肢は、ない。
「ところで、ルイ? あなたは『前世』というものを信じる?」
「……はぁ?!」
抱きしめるのはやめ、呆気にとられた顔をして私を見るルイに、何から話そうか私は小さく笑うのだった。