乙女ゲームヒロインは悪役令嬢をお望みです!
そしてこのリンガル王国には貴族制が存在している。
私の前世での世界と同じように、五等爵。
上から、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵となっている。
その下に多くの市民が存在しているのだ。
私の家は王国に三家しかない公爵家の一角、ダンカン公爵家。
私はそこの一人娘であり、最も王家に近い娘とも言われている。
……まぁ私は王家に興味はないし、むしろなりたくもないので、他の娘にその役割を譲ろう。
決して現実逃避ではない、ないったらない。
ただ、やはりお父さまは私をこの国の第一皇子ニコラス・エドワード様と結婚させたいようだ。
今でさえ権力は握っているというのにまだ足りないと言う。
私としてはこれ以上ダンカン公爵家の力が強まるのは良くないと思うのだけれど。
この国は良くも悪くも貴族制。
故に公爵家とは言えども、力を持ちすぎるのは王家やダンカン公爵家の派閥ではない者たちに対して良い印象は与えない。
ただでさえ、“私”という規格外の人間がいるのに。
お父さまはそのことに気がついていながらも目を逸らしている。
そんなお父さまは嫌いだけれど、抑えなければならない。
エドワード様が拒めば、私との結婚は潰えるのだから。
そのために、私はエドワード様に嫌われる必要がある。
と、まぁ貴族の面倒くさい思惑などはこの際忘れておく。
問題の先送りというわけではない、決して。