天空に一番近い蒼～女子校体育教師と生徒の恋の場合

「あー、あんな綺麗な人が母親とか、それなりにショックだわー。」

「綺麗な人…」

「青海、豊島先生知らないのか？」

「いや…」



知らないも何も…



「去年の春休み、引き継ぎで2週間一緒に仕事したんだけどさー。

美人でスタイル良くて優しくて、しかも性格良くて。めっちゃ好みなんだけどなぁ…」

「……」

「出逢うのがあと何年か早かったら絶対アタックしてたわー。」

「……」

「あ、これみんなには内緒な。もうちょっと女子高生にモテてたいし。」

そう言って先生はにっと笑う。



「…馬鹿じゃないの。」

「うん。俺もそう思う。」

「……」



私はそれから先生が煙草を吸い終わるまで何も言わなかったし、先生もまた何も言わなかった。



「さてと。」

先生がむくりと起き上がり、ステンレスの携帯灰皿に吸殻をぽいと入れた。



「ここ来ると開放的になっていかんな。余計な話しちまうわ。」



先生は立ち上がると、

「青海もそろそろ戻れよ。」

と言って後ろ手に手を振り、非常階段の扉へと帰って行く。



その背中に私は小さく呟く。

「…お前もか。ばーか。」

　　　　　　*　　*　　*