雨の降る世界で私が愛したのは
成熟したオスのゴリラの彼は始め言葉をまったく発することがなかったため、周りは彼が知恵遅れなのだと判断していた。
わたしが彼の知性の高さを知ったのは一冊の小説がきっかけだった。
多くの類人猿は文字を認識できるが、彼の能力は人とまったく変わらないレベルかそれ以上だった。
所謂天才型のゴリラだ。
通常天才型のゴリラは人と等しい数学的な能力、言語能力、記憶力とそれに伴う判断力などを持ち合わせており、感受性もほぼ人と変わらないと言っていいだろう。
わたしが出会った天才型ゴリラたちは他のゴリラたちとは一線を画した待遇を受けていた。
つまり檻に入れられていなかった。
天才型と疑いのあるゴリラはわたしのいるような研究室にすぐに送られてくる。
多くの検査とテストを経た結果、天才型と判断されたものはそのまま研究室に残り、生活を共にするようになる。