雨の降る世界で私が愛したのは
それに動物園には専門の獣医がいる。
虐待されているのだったら気づくはずだ。
電話が鳴った。
ほのかだった。
『ちょっとぉ、さっき日本に着いて空港のテレビで依吹が映ってたんだけど、なんか真面目な顔しておじぎなんかしちゃって笑っちゃうんだけど』
ほのかは何が起こったのか知らないようだった。
一凛が簡単に事の事情を話すとほのかは言った。
『大丈夫だよ、騒ぎなんて今だけだって。その怪我した男が退院する頃にはみんなそんなこと忘れちゃうから。え?一凛もちょっと関わってた?マジ?何やってんのよ二人とも。今バンコクのフライトから帰ってきたばかりだけどそっちに直行するね。タイ焼酎ラオカオ持ってくからさ』
その日ほのかは一凛のところに泊まっていった。
アルコール度数四十度のラオカオをストレートで飲み酔いつぶれて帰れなくなってしまったというのが本当のところだが、ほのかなりの慰め方だったのかも知れない。