雨の降る世界で私が愛したのは
一凛が何度そう繰り返してもマスコミの暴走は止まらない。
もともと真実を知る気などないのだ。
仮定でしかないことをまるで真実であるかのように報道する。
視聴率が取れればなんでもいい。
その結果どうなってしまっても知らん顔。
マスコミと世間はハルに凶暴なゴリラというレッテルを貼った。
そして暴走した人々はハルにとって最悪な方向へと突き進んでいく。
もはやハルがなぜ人を襲ったのかという理由などどうでもよく、そんな危険なゴリラは殺処分してしまえという空気になっていた。
一凛はハルの正当性を主張し続けたが、それとは反対の意見を言う専門家の主張をマスコミは大きく取りあげた。
そればかりかその専門家はどうやって知ったのか一凛が依吹の動物園とハルに関係したことを持ち出し、なぜそんな危険なゴリラがいるのに事件が起きるまで放置していたのか、予見できたではないかと一凛を責めるようなことを言い出した。