雨の降る世界で私が愛したのは


 眩しそうに目をしばたたくハルを一凛は抱きしめた。

「戻ってくるのが遅いから心配した」

 一凛はハルを抱きしめる腕に力を入れた。

「ハル」

 見上げるとハルはそっと一凛に手を回した。

 片方の手で優しく一凛の髪に触れる。

 一凛はその手に自分の唇を押し当てた。

 ハルの胸の中は誰よりも大きくて心地よく安心できた。

 ずっとハルにこうして触れたいと思っていた。

 でもその気持ちは本来あるべき形ではないと、無意識に封印し、決して触れないようにしていた。

 人々は言うだろう、それは超えてはいけないものなのだと。

 でも誰がそんなことを決めた?

 人々は言うだろう、それは自然に反していると。

 でも存在するものすべては自然ではないのか?

 人々は言うだろう、それは神を冒涜する行為だと。

 神は二人を裁くのだろうか?

 裁くのだとしたらそれは神ではなく人ではないのか。

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