雨の降る世界で私が愛したのは
ニュースでは何も言っていないが、公表していないだけで警察はハルの脱走に一凛が関わっていると勘づいたのかも知れない。
もうお金を引き出すのは止めたほうがいいかも知れない。
もしかしたら警察はすでに一凛の足取りを追っているかも知れない。
いやそうだからこそ家にまでやってきたのだ。
どこかもっと遠くに逃げようか?
でも身分証明なしに車を借りるのは難しい。
ハルは目立ちすぎる。
危険を冒して移動するより今の所にいた方がいいかもしれない。
「行きましょうかハル」
一凛は傘の下に滑り込むとハルに寄り添った。
ここのところずっと激しい雨の日が続いている。
大きな傘をさしても肩が濡れて冷たかった。
ハルはことあるごとに、何かあったときは自分を置いて逃げろと一凛を諭すように言った。
何かって何よと問うと、自分が見つかった時だと、ハルははっきりと言う。
ハルを置いてなんて逃げられないと一凛が反論すると、ハルはそれを約束してくれなければ自分は今にでも出て行くと、その声の厳しさに一凛はうなずかざる得なかった。