雨の降る世界で私が愛したのは


 彼女がアニマルサイコロジーを勉強したという大学は聞いたこともない名前だったし所属しているという動物愛護団体も同じだった。

 画面の中で彼女は真剣な目をして訴える。

『こういう仕事をしていると気をつけなければいけないことがあるんです。どんなに心を通わしても、動物との間に必ず一線を引くということです。感情に流されてしまうと結局は動物を不幸にしてしまいます。今のこの人中心の社会はすぐには変わりません。わたしの仕事は動物を守ることなのです。そのためには時には冷たいかも知れませんが感情を切り捨てなければいけないときがあるのです』

 いつだったかどこかの雑誌のインタビューで一凛が語った言葉だった。

 野菜と果物が入ったビニール袋が重い。

「どうやって感情を切り捨てるの?」

 気づくとテレビに向かって問いかけていた。

 通りすがりの人が一凛をちらりと見る。

「形のないものをどうやって切ったり捨てたりできるの?」



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