気付いて、届いて
腕の中、彼女は震える。

誰もいない展望台。

夕陽の赤さか、頬の赤さか。


「そんなに震えないで…」

少し、緊張が解けたのか、彼女の体が柔らかさを取り戻す。

震えは止まらない。

俺の腕が震えてるのか。はじめて触れた、彼女の体。
そっと頭を撫でててみる。小さな呼吸。小さな肩。


「少し、えっちなことしてもいいかな」


え、と戸惑いながら、彼女は顔を上げる。二人の体に隙間ができた。そっと、胸に手を置いた。見た目よりも豊かな胸。

柔らかくなった体が再び固くなる。

目を一瞬見開いた。

そこで、彼女の唇を捕えた。

緊張と驚きで、かさつく唇。そっと、舌を這わせてみる。

あ、と睫毛をふせる彼女。

「もう、一回」


睫毛は、彼女の瞳にかかったまま。もう一度、唇に触れた。

俺の唾液で湿った唇……柔らかい、小さい。

震えながらも、俺にしがみつく彼女。

まだ、手は胸の上。


「ドキドキしてる」


彼女の呼吸だけが、聞こえた。
< 1 / 17 >

この作品をシェア

pagetop