気付いて、届いて
彼女の目から、ひとすじ。

大粒の雫がこぼれた。

ゆっくり、俺から離れる。

ワンピースの裾を握り締め、そのこぶしの上に、また、雫が落ちる。


唇を開いて、閉じる。開こうとして、おえつに変わる。

数センチと離れてないのに、彼女が孤独に見えた。

頬に触れる。

びくっと、肩が震える。

「……っ」

いくつもの雫が頬をつたって、俺の手を濡らす。

そっと、彼女の体を撫で、包みこむ。

しばらく、彼女は泣き続けた。
話そうとして、苦しげに唇を噛む。

「大丈夫だから」

震える彼女の体を抱きかかえる。

「あの…っ、ね…」

腕も涙で濡れていた。

「前にね…っ」

強く、抱き締める。

「男の子にね…っ…」

みなまでいうな。

いい。言わなくていい。

もっと強く抱き締めた。

「むりやりっ…」

「わかった。わかったから、もういいよ。辛かった?ごめんな。」

声を漏らして、泣き続ける。

「話してくれてありがとな…大丈夫。みさがいいって言うまで、なんもしないから」

彼女は泣き続ける。

ただ、泣き続けた。
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