気付いて、届いて
「最近楽しそうだな」

兄貴がグラスを傾け、ニヤニヤしながら言う。

「まあな」

まだ彼女を誰にも紹介したことがない。大事に隠して起きたいから。

「いいこなのか?」

「なにが」

「カノジョ」

バレてるらしい。

「かわいいよ、めちゃめちゃ」

ノロケやがって、と兄貴は俺の頭を小突く。
持っていたグラスから、しずくが一滴垂れた。

「紹介しろよ」

「まだ早いよ、指輪もやってない」

キラキラと光を反射するしずくを見ながら言う。

そうだった。まだ指輪も渡してない。サイズはいくつなんだろう。あの小さな手指にはどんな指輪が似合うだろう。

「印つけとかないとだめだぞー」

「経験談かよ」

指輪なんて渡しても、きっと彼女は普段つけない。

「そのうちな。誕生日にでも」

彼女の誕生日は雪の降り始めるころだ。まだ悩む時間はある。

早い会いたい。
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