気付いて、届いて
ひとけのない駐車場。

狭い車の中。

動かない空気。

抑えがきかない衝動。

愛しい彼女。

閉じられた唇。








引き寄せ、重ねる。









小さな掌、ぎゅっと服を掴む。

いつもより、激しい口付け。

彼女の小さな唇をめいっぱい広げ、

中の粘膜を舐めあげる。


「んんっ…」


甘い声と甘い唾液。

腰をぐっと強く抱くと、ぁっ…、苦しそうな甘い声。

頬撫でる。

すべすべ滑らかで、ふっくら柔らかい。

彼女はどこもかしこも柔らかい。

俺はその甘さと柔らかさに夢中だ。

やっと口を離す。

うるんだ瞳と皺のよった眉間と半開きで艶めく唇。

ここから、甘い吐息が漏れ、俺を狂わす。

掌で胸を上から下へ撫でる。

ぴくっと震え、

目と唇はきつく閉じ、

眉間の皺はいっそう深く。
再び抱き寄せ、包み込み、頭を撫でる。

彼女の呼吸は落ち着いたが、俺は荒くなるばかり。

手に触れた。

手首を掴み、

ゆっくり、

下へ。

ジーンズ越し、

彼女のあたたかさが伝わる。

冷え症のはずが、あたたかい。

「触って?」

静かに、そっと、2、3度指先でなぞる。

だめだ。

こんなところでは。

ああ、でも、抑えられなくなる。

少し抱き締めるだけのつもりだった。

なのにこんなに…。


「みさ」


唇をまた、重ねようとした。


「ハジメテじゃないの」


震える声で言った。
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